AGO フィルム現像機による RA-4 プリントの基礎
カラー引き伸ばし機と AGO を使って自宅で RA-4 のカラープリントを作るための、露光、カラー補正、現像の基本をまとめたガイドです。
このページの内容
AGO(アゴー)フィルム現像機による RA-4 プリントの基礎
はじめに
まず、RA-4 プリントについての深い知識を共有してくださったイタリア Colla Lab の Mario Mazzotta 氏に、心からお礼を申し上げます。氏の経験が、私たちのやり方を形づくる助けになりました。
このガイドは、自宅で RA-4 のカラープリントを作ってみたい方のための出発点です。カラー引き伸ばし機と AGO を使って安定した結果を出すために欠かせない部分を中心にまとめています。世の中にはもっと高度な技法もありますが、まずはこの内容で、最初のプリントを自信をもって仕上げられます。
本書は、実践的な理論、引き伸ばし、現像の三つのパートに分かれています。
最後に、仕上がりをより安定させるためのプロのコツをいくつか紹介します。
はじめに
プロセスの概要
RA-4 プリントは、C-41 のカラーネガを引き伸ばし機にセットすることから始まります。投影された像の大きさとピントを合わせます。すべて問題なければ照明を消し、引き伸ばし機の下に RA-4 印画紙を一枚置き、引き伸ばし機のタイマーで露光します。
露光した印画紙は REEL Paper 5 を入れた Paterson タンクにセットします。これで明るいところに戻って現像できます。
RA-4 のプロセスでは通常、二種類の処理液を使います。カラー現像液と、ブリックス(漂白定着液)です。そのあとに水洗をします。ここまででプリントの処理は完了です。
最初の結果を見たら、露光時間やレンズの絞りを変えたり、引き伸ばし機のイエローとマゼンタのフィルターでカラーバランスを微調整したりできます。納得のいくプリントになるまで、この作業を繰り返して詰めていきます。
実践的な理論
露光とテストストリップの作り方
プリントを成功させる鍵は、露光を正しく決めることです。そのための最も簡単で効果的な方法の一つがテストストリップです。印画紙全体を一度に露光するのではなく、場所ごとに露光時間を変えます。最初の露光では印画紙の一部を覆っておき、段階的に覆いをずらして見える面積を広げていきます。こうすると、明るすぎる部分(露光不足)から暗すぎる部分(露光過多)までが帯状に並びます。
露光の間隔は 3 秒から始めて、ストリップ上に五つほどの段階ができるようにします。引き伸ばし機のレンズは f/8 にしておくと、シャープさとコントロールのバランスがとれます。
露光テストストリップ
3、6、9、11、13 秒。最終プリントには 11 秒を選びました
実践的な理論
現像が終わったら、テストストリップを見て、階調とディテールのバランスが最も良い部分を探します。良い段階が見つかったら、その露光時間で本番サイズのプリントを焼きます。
濃度
時間 5s 10s 20s
カラー補正
最初のテストストリップでは、たいてい色が外れています。カラーバランスを合わせるのは最初は難しく感じますが、少し練習すると驚くほど感覚的にできるようになります。道具は要りません。自分の目と、カラーホイールについての基本的な理解だけで十分です。
カラーヘッドの出発点としては次の値が良いでしょう。マゼンタ 60、イエロー 60、シアン 0(RA-4 プリントではシアンは使いません)
ここを出発点に、プリントの見え方に応じてマゼンタとイエローのフィルターを動かし、色を詰めていきます。慣れてくると、特に肌のようなニュートラルな階調で色の転びを読み取るのが、ずっと楽になります。
実践的な理論
RA-4 のカラーホイール - 目指すのは中心
寒色
アイシーブルー ターコイズ
C
引き伸ばし機の Y の最大値
引き伸ばし機の M の最大値
G
バイオレット
シャルトリューズ
引き伸ばし機で M=0
引き伸ばし機で Y=0
YM
スカーレット
オレンジ
R
暖色
例:プリントが黄色すぎる場合は、引き伸ばし機の Y の値を上げます。
プリントが赤すぎる場合は、M と Y の値を同じだけ上げます。プリントが緑すぎる場合は、M の値を下げます。プリントがオレンジの場合は、M と Y を上げますが、Y は M の二倍上げます。
実践的な理論
テストストリップがオレンジに寄りすぎていたので、イエローを 40 ほど、マゼンタを 20 ほど上げてカラーバランスをニュートラルに近づけました。
色が合っているかを見分ける方法
プリントのカラーバランスを判断する一番簡単な方法は、肌の色を見ることです。人の肌は色の転びにとても敏感で、少しでも「おかしい」と感じれば目がすぐに気づきます。人種や肌の濃さにかかわらず、健康な肌の色は、おかしな色かぶりのない、自然で温かみのある見え方になるはずです。
引き伸ばしガイド
ネガの準備
まず、適正露光で濃度のしっかりした C-41 ネガを選びます。そのほうがピント合わせもカラー補正も、プリント全体もずっと楽になります。ベースが透明なネガは避けてください。たとえば Kodak Aerocolor(Santacolor、Flic Film Elektra 100)や Harman Phoenix です。これらには通常の C-41 フィルムにあるオレンジベースがないため、RA-4 の通常のフィルター設定では正しくプリントできません。
- ネガは乳剤面を下に向けてフィルムホルダーに入れます。乳剤面はつや消しのマットな面(下向き)、ベース面は光沢のある面(上向き)です。
ブロアーでほこりを飛ばします。ほこりは最終プリントにそのまま写ります。そのあとフィルムホルダーを引き伸ばし機に差し込み、しっかり固定され、まっすぐ入っていることを確かめます。
プリントするコマを選ぶ前に、ライトテーブルの上でルーペを使ってネガを確認します。
引き伸ばしガイド
プリント範囲の調整とピント合わせ
完全な暗闇の中で、使う予定のサイズの RA-4 印画紙を一枚取り出します。この一枚は、投影範囲を決めるために使い切ります。
印画紙を引き伸ばし機の下に置き、引き伸ばし機のランプを点けます。投影された像が印画紙より少し大きくなるまで、ヘッドの高さを調整します。こうすれば全面をカバーできます。
マスキングフレームがあれば、プリントの縁をきれいに出せます。ない場合は、引き伸ばし機のベースボードにテープで目印を貼っておくと、暗闇でも印画紙を正確に置けます。
次にピントを合わせます。フォーカスファインダー(粒子拡大鏡)を使い、ネガの粒子ができるだけシャープに見えるように合わせます。こうするとプリントがくっきりとディテールのあるものになります。
テストストリップを作る
引き伸ばし機の設定は、絞り F8、タイマー 3 秒、カラーヘッドはイエロー 60、マゼンタ 60、シアン 0 です。
照明を消します。
新しい RA-4 印画紙を一枚取り出します。取り出したら印画紙の箱を閉じます。先ほど使い切った印画紙をマスクにして、テストストリップを段階的に露光します。3 秒ごとにマスクをずらし、新しい部分を出していきます。同じ一枚に 5 回から 6 回の露光をします。露光した印画紙を乳剤面が内側になるように丸め、Paper 5 のリールにセットします。
ファンネルで Paterson タンクを閉じます。照明を点けて構いません。
これで最初の露光ができました。あとはプリントを現像して、どう仕上がったかを見ます。
まとめ - 引き伸ばしに必要なもの
カラー引き伸ばし機
ブロアー
フォーカスファインダー(粒子拡大鏡)、マスキングフレーム(任意)、適正露光の C-41 ネガ
RA-4 印画紙
現像ガイド
標準の時間は次のとおりです。現像液は 35 °C で 45 秒(32 °C 前後で行うことをおすすめします)。ブリックスは 35 °C で 1 分(こちらも 32 °C 前後でうまくいきます)。水洗は冷水で 2 分。最終プリントでは任意で、最後に安定液を加えます。
薬品の準備
Arista、Bellini、Adox など、家庭向けに作られた一般的な RA-4 キットを使えます。たいていは 2.5〜5 l のキットです。
薬品はメーカーの指示どおりに調合します。使用液は 1 l のボトルに保管します。ボトルをぬるま湯を張ったバケツに入れ、スーヴィードヒーターで 32 °C(90 °F)まで温めます。公式の 35 °C(95 °F)より数度低くするのは意図的です。現像がわずかに遅くなり、結果が安定します。AGO は 35 °C を前提とした標準プログラムのまま動きますので、AGO 側で時間を変える必要はありません。薬品が適温になれば、現像を始められます。
現像に必要なもの一式
現像ガイド
AGO で RA-4 印画紙を現像する
リアスタンドと AGO を Paterson タンクに取り付けます。体重をかけてしっかり押し込み、確実に密閉します。
本体は安定した台の上に水平に置きます。現像液を最低 250 ml 注ぎ、Start ボタンを押します。
タイマーがゼロになったら、現像液を保管容器に戻して再利用します。
同じ手順をブリックス、続いて水洗でも行います。プリントを取り出して仕上がりを確かめ、脇に置いて乾かします。
これで最初のプリントができました。おそらく完璧ではないはずですが、それでいいのです。これを見て露光とカラーバランスを判断し、引き伸ばし機に戻って修正します。
感覚がつかめるまでに 5〜10 枚かかるかもしれません。ただ、練習するうちに、どの色をどれだけ動かせばよいかが早く分かるようになります。役に立つコツとして、最初のうちは思い切って動かしてみてください。イエローとマゼンタを 30 ユニット以上動かします。そうすると画像が反対の色にはっきり寄るので、次の一手を自信をもって決められます。
まとめ - 現像に必要なもの
AGO フィルム現像機、Paterson の 5 本または 8 本リール用タンク、REEL–Paper 5(RA-4 印画紙を保持するため)、RA-4 現像キット(例:Arista、Bellini、Adox)、スーヴィードヒーター(温度を安定させるために強くおすすめします)、バケツ(薬品を温めるため)、1 l の保存ボトル二本(現像液用とブリックス用に一本ずつ)、流水
プロのコツ
薬品の補充
家庭での RA-4 プリントでは、回転式のチューブプロセッサーがよく使われます。プリントを直接ドラムに入れて回す方式です。この方法では一枚あたり 50 ml ほどの薬品を使い、薬品は使い捨てにするのが普通で、一回ごとに廃棄します。
AGO と Paper 5 インサートを使う場合、各ステップで最低 250 ml が必要です。これを一枚ごとに捨てるのはもったいない話です。
実際には、同じ 1 l の現像液で少なくとも 15 枚は、目に見える品質の低下なしにプリントできます。ただ、さらに安定した結果を求めるなら、薬品の補充という方法があります。
使った薬品を捨てる代わりに、プリントのたびに一部を新しい薬品と入れ替えます。こうすると現像液とブリックスの活性が保たれ、使える期間が延びるうえ、一連の作業の最初から最後まで均一な結果になります。
印画紙のサイズごとの正確な補充量です。現像液とブリックスの活性を一定に保つために、この値を使ってください。これは安全側の補充量です。メーカーのデータシートにはこれより少ない値が載っていることもありますが、この値のほうが余裕があり、特に家庭での使用では確実です。
印画紙サイズごとの補充量(現像液とブリックス)
4×6"(10.2 × 15.2 cm):現像液 8 ml、ブリックス 4 ml
5×7"(12.7 × 17.8 cm):現像液 11 ml、ブリックス 6 ml
8×10"(20.3 × 25.4 cm):現像液 26 ml、ブリックス 13 ml
9.45×12"(24 × 30.5 cm):現像液 35 ml、ブリックス 17 ml
1 平方フィートあたり:現像液 46.5 ml、ブリックス 23 ml
1 m² あたり:現像液 500 ml、ブリックス 250 ml
プロのコツ
F ストップで考える
暗室では、つい秒単位で露光を調整したくなります。3 秒、6 秒、9 秒というように。しかし秒は直線的で、写真の露光はそうではありません。本当に必要なのは、光を一貫した形で扱う方法です。そこで F ストップの出番です。
秒が誤解を招く理由。時間を 5 秒から 10 秒へ倍にすると、ちょうど一段分明るくなります。しかし 10 秒から 15 秒にしても、半段分しか増えません。つまり秒で調整すると露光の変化幅がそろわず、テストストリップも微調整も予測しづらくなります。
F ストップならコントロールできます。F ストップは倍と半分のスケールで働きます。一段ごとに光の量が倍になるか半分になります。基準の露光が 8 秒なら、+1 段 = 16 秒、–1 段 = 4 秒、+2 段 = 32 秒です。どこから始めても、一段の変化は同じ見え方の効果になります。予測しやすく、繰り返しやすくなります。秒ではなく段で考えれば、もっと賢くプリントできます。
5s + 2s → 1/2 段暗くなります 20s + 2s → 1/10 段暗くなります
F ストップによる覆い焼きと焼き込みのメモ
プロのコツ
覆い焼きと焼き込み
- 覆い焼きと焼き込みは、プリントの特定の部分の明るさを調整する、単純ですが強力なテクニックです。プリントの一部が明るすぎたり暗すぎたりすることがありますが、覆い焼きと焼き込みを使えば、ほかの部分に影響を与えずにその部分だけを調整できます。
覆い焼きとは、露光の一部の時間だけ光を遮り、その部分を明るくすることです。焼き込みとは、画面の一部に余分な露光を与えて暗くすることです。
やり方。覆い焼きは、メインの露光中に手や紙で特定の部分の光を遮ります。硬い境目が出ないように、少しずつ動かし続けます。焼き込みは、メインの露光のあとに手で画面のほかの部分を覆い、暗くしたい部分だけを出します。その部分に露光時間を足します。境目をぼかすため、カードを細かく動かします。
コツ。手を印画紙から高く離すと影が大きく柔らかくなり、広い範囲に向きます。低く構えるほど、狭い部分を細かくコントロールできます。硬い境目が出ないように動かし続けてください。線が見えないように、覆い焼きや焼き込みの道具は常に動かします。時間の調整は小さく始めます(焼き込みなら +½ 段ほど)。印画紙なしで何度か練習し、動かし方とタイミングをつかんでおきます。手順を書き留めておけば、確実に再現できます。露光時間は 20 秒以上にしておくと、コントロールしやすくなります。
プロのコツ
RA-4 プリントにおける予備露光
予備露光は「フラッシング」とも呼ばれ、実際の画像の露光の前に印画紙へわずかな光を当てるテクニックです。非常に暗いプリントでシャドウのディテールを引き出したり、特にコントラストの高いネガできついコントラストを和らげたりできます。
予備露光を使う理由。カラーネガの中には、特にコントラストの強いものだと、シャドウが沈みすぎたりディテールが失われたりするプリントになるものがあります。印画紙に予備露光を与えると、ベースの露光がわずかに持ち上がり、暗い部分がプリントしやすくなります。中間調やハイライトへの影響は大きくありません。
やり方。ネガを入れていない引き伸ばし機や、フィルムの素抜け部分のような、均一な光源を使います。
光量は少なめにします。絞りを絞った状態(たとえば f/11 や f/16)で 1〜3 秒が目安です。メインの露光の前に行います。実際に試してみるのが一番です。予備露光が多すぎると印画紙がかぶり、全体のコントラストが下がりすぎます。ほんの少しで十分なことが多いです。
役に立つ場面。コントラストの高いネガをプリントするとき。シャドウのディテールを残したいとき。非常に暗い部分の色かぶりを抑えたいとき。
おわりに
最後にもう一つ。露光時間、フィルターの設定、レンズの絞りを書き留めておくと、次に同じ写真を焼くときに再現しやすくなります。
そして、この作業そのものを楽しんでください。自分の手で写真が色をまとって立ち上がってくる感覚に勝るものは、そうそうありません。
お読みいただきありがとうございました
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